大学職員の採用に関わったことのある人なら、誰もが頷くと思うのですが、エントリーシートの志望動機欄には驚くほど似た文章が並びます。「教育を通じて社会に貢献したい」「学生の成長を支えたい」「母校に恩返しがしたい」。どれも悪い動機ではありません。ただ、何百枚と読む側からすると、ほとんど区別がつかないのです。
そしてもうひとつ、採用側がうっすら感じ取っていることがあります。それは、これらのきれいな言葉の下に「安定していそうだから」「ワークライフバランスが良さそうだから」という本音が透けて見えるケースが少なくない、ということです。
本音が「安定」でも、別に構わない
最初に言っておきたいのですが、安定を求めること自体は何も悪くありません。面接官だって人間ですから、生活の安定を重視する気持ちは理解しています。問題は、本音を隠すために借りてきた言葉を使うと、その「借り物感」が文章にも受け答えにも出てしまうことです。
「教育に貢献したい」と書いた人に「具体的にはどんな貢献を?」と一歩踏み込むと、途端に言葉に詰まる。これは面接で本当によくある光景です。動機が自分の経験に根ざしていないと、深掘りに耐えられません。
ありがちな失敗パターン3つ
① 大学職員「なら」誰でも言えることを書く
「学生を支えたい」は、塾講師でも予備校職員でも人材会社でも言えます。なぜ大学なのか、なぜ職員(教員ではなく)なのか、なぜその学校なのか。この3段階を自分の言葉で埋められていない志望動機は、汎用テンプレートに見えます。
② 受験する学校のことを調べていない
建学の精神や中期計画に触れる受験者は多いのですが、ウェブサイトの理念ページをなぞっただけの引用はすぐ分かります。むしろ事業報告書や財務情報、その学校が今まさに取り組んでいる改革に触れている人のほうが、よほど熱意が伝わります。
③ 「学生時代の経験」が遠すぎる
特に転職組に多いのですが、10年前の学生時代の感動体験だけを動機の核にすると、「では、この10年はなぜ別の仕事を?」という疑問が生まれます。直近の職務経験と大学職員という選択がつながっているほうが、ストーリーとして自然です。
志望動機を組み立てる順番
おすすめしたいのは、きれいな言葉から書き始めるのではなく、次の順番で素材を集めることです。
- 自分の本音を全部書き出す。安定、給与、転勤がない、土日休み。誰にも見せないメモなので正直に。
- その中で「人に語れる形にできるもの」を選ぶ。たとえば「腰を据えて長く働きたい」は、「ジョブローテーションで大学運営の全体を学びながら、長期的に組織へ貢献したい」という前向きな動機に育てられます。嘘ではなく、本音の延長線です。
- 自分の経験と接続する。前職で何をして、何にやりがいや限界を感じ、それが大学という場でどう活きるのか。
- 最後に、その学校でなければならない理由を足す。公開資料を読み込めば、必ずその学校固有の文脈が見つかります。
「で、あなたは何ができるの?」に答える
志望動機と並んで大事なのが、貢献の中身です。大学職員の仕事は、広報、財務、システム、国際交流と幅広く、民間で培ったスキルが直接活きる場面が増えています。「教育への思い」だけで押すより、「自分はこういう経験があるので、こういう場面で力になれるはずだ」と語れるほうが、採用側にとっては具体的に働く姿を想像しやすいのです。
思いは入口にすぎません。最後に評価されるのは、思いと能力と、その学校の課題が一本の線でつながっているかどうかです。きれいな言葉を探す時間があったら、その学校の資料をもう一度読み込むことをおすすめします。
- 「安定したい」という本音は悪ではない。借り物の言葉で隠すことが問題
- 「なぜ大学か・なぜ職員か・なぜその学校か」の3段階を自分の言葉で埋める
- 本音を前向きな動機に育て、自分の経験と接続させる
- 思い・能力・学校の課題が一本の線でつながった志望動機が最も強い